近畿大学図書館司書 通信課程 合格レポート

2020年度 近畿大学で図書館司書資格を取得した体験記

【図書館制度・経営論】近畿大学図書館司書通信課程 合格レポート

設題

 図書館経営の基本思考の4種を挙げ、それぞれについて簡潔に説明した後、「図書館の設置および運営の望ましい基準」(テキスト巻末に収録)の公立図書館の「3.図書館サービス」に明記されていることを実現するためには、どのような図書館運営が望まれるか、4つの基本思考に関連させながら、貴方自身の考え方を含め論じてください。 

 

レポート作成上の注意事項

  •  箇条書きでなく、文章で書くこと。
  • 設題の内容をよく理解し、自分の言葉で文章をまとめること。
  • テキスト及び参考文献から引用する場合、出典を明確にすること。
  • テキスト以外の参考文献を効果的に活用すること。
  • 感想文やエッセイではなく、指定された教材等の学習成果を明確に反映させること。
  • 本文文字数は、1,900以上であること。

 

総評基準

  •  テキストなどの丸写しは評価しません。
  • 記述内容が論理的であるか、結論を述べているかを評価します。
  • テキストをよく読んで内容を理解し、レポートの作成に取り組むこと。
  • テキストのみならず、参考文献を活用し、その学習成果を明確に反映させること。

 

★合格レポート★

1. 図書館経営の基本思考

1-1.  利用者中心思考

 図書館業務のあり方を利用者の立場に立ち、図書館政策の全てを利用者を中心に考えることを利用者中心思考という。

 つまり、図書館サービスを利用者のニーズに視点を当て、社会変化に柔軟に適応した適切なサービスを提供することで、図書館活動と図書館経営そのものを、利用者の立場から考え、運営すべきである、という考え方である。

 

1-2.  建設的発展思考

 「図書館は成長する有機体である」というランガナタンの図書館学の五原則(1957年2版、初版1931年発行)のとおり、社会の変化に合わせて、図書館自身も常に変化し、発展していかねばならない、という考え方を建設的発展思考という。

 図書館は、常に社会と共にあるが、社会は常に変化しているので、その変化に合わせて図書館も変化しなければ、社会的ニーズに対応できなくなってしまう。従って、図書館自身も常に発展成長していかねばならない、という考え方である。

 

1-3.  中道思考

 図書館政策を行うにあたって、極端に偏った経営政策は好ましくなく、全体のバランスを重視し、調和させることが大切である。これは仕事、サービス、資料購入のバランス、あらゆる政策に共通する考え方で、このような考え方を中道思考という。

 極端になっている仕事はないか、無駄な仕事はないか、仕事にむらがないか、無理をしている仕事はないか、などを日常業務の中で常々考える必要がある。

 

1-4.  未来思考

 最近の社会は激しく変化しており、先行きの不透明な時代ではあるが、経営を考える場合、数十年先の未来を見据えて政策を考える必要がある。将来をできるだけ読むことは、将来の利用者に対して適正なサービスの提供を保障することになるので、こうした未来思考は極めて重要である。図書館政策においても、未来を予測できる情報をどれだけ収集できるかが大変重要である。

 

 2.  「図書館の設置及び運営の望ましい基準」の公立図書館の「3.図書館サービス」に明記されていることを実現するには、どのような図書館運営が望まれるか

 

2-1.  貸出サービス

 公立図書館が利用者の多様なニーズに応えるためには、まず、利用者が望む時、望む場所で貸出サービスを利用することができるよう、時間外貸出や館外貸出等のサービスを充実させる。

 また、全ての利用者に公平に資料が行き渡るよう、貸出期間や貸出冊数制限を定めたり、予約制度を設ける。

 

2-2.  情報サービス

 公立図書館は、利用者の求めに応じ、利用者が求める資料、情報にアクセスできるよう、資料の提供、紹介、及び情報の掲示等を行うレファレンスサービスの充実に努める。利用者のニーズに細やかに対応できるよう、対面式だけでなく、手紙や電話、ファックスや電子メールを活用して多様にレファレンスサービスを提供できるような環境を整備しておく。

 また、利用者が自ら調べられるように、インターネット環境を提供したり、商用データベースを契約して提供したり、様々にサービスを展開することが望ましい。

 

2-3.  地域の課題に対応したサービス

 公立図書館は、利用者及び住民の生活や仕事に関する課題、地域の課題の解決に向けた活動を支援するためのサービスを行う。このようなサービスはあまり知られていないため、広報活動を推進するなど図書館側から積極的に働きかけるとよい。

 また、地域の課題や現在・未来の課題など、サービス対象者のニーズを的確に把握する姿勢が重要である。

 

2-4.  利用者に対応したサービス

 公立図書館は、多様な利用者及び住民の利用を促進するため、サービス対象としてどのような人々がどの程度いるのか、館内利用者だけでなく非来館者も含めて広く実態を把握しておく必要がある。

 乳幼児、児童、ヤングアダルト、成人、高齢者といったそれぞれの年齢層に応じた適切なサービスを提供する。特に、高齢者は体力や視力が低下してくるため、パンフレットや案内に大きな活字を使用したり、拡大読書機や老眼鏡を置いておく。

 一般の図書館サービスを利用するのが困難な利用者には、点字資料や録音資料、拡大資料等を整備しておく。

 また、来館が困難な利用者のために、宅配や郵送貸出、施設訪問サービス等を展開することが望ましい。

 

2-5.  多様な学習機会の提供

 公立図書館は、利用者及び住民の自主的、自発的な学習活動を支援するため、講習会、読書会、鑑賞会等を主催し、これを奨励する。

 ニーズを幅広くとらえ、計画を立案し、ポスター等で広報活動を行う。また、不公平にならないよう、特定の団体だけがいつも使っていたりしないよう留意する。

 

2-6.  ボランティア活動等の促進

 公立図書館は、ボランティアの技術を高めるための講座を開催したり、ボランティア活動を行う場を提供したり、地域の施設とボランティアを繋ぐコーディネーターの役割を担うことが望ましい。

 

2019字

 

参考文献

「図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(平成24年12月19日施行)

「図書館制度・経営論」糸賀 雅児、薬袋 秀樹著, 樹村房, 2013