近畿大学図書館司書 通信課程 合格レポート

2020年度 近畿大学で図書館司書資格を取得した体験記

【情報サービス論】近畿大学図書館司書通信課程 合格レポート

設題

レファレンスサービスの理論の歩みを簡潔明瞭に記した後、その理論と今日のレファレンスサービスと利用指導(教育機関→図書館利用教育、公共図書館→情報活用能力の育成)の関連を述べ、これからの利用指導はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め論じてください。

 

レポート作成上の注意事項

  •  箇条書きでなく、文章で書くこと。
  • 設題の内容をよく理解し、自分の言葉で文章をまとめること。
  • テキスト及び参考文献から引用する場合、出典を明確にすること。
  • テキスト以外の参考文献を効果的に活用すること。
  • テキスト以外の参考文献を効果的に活用すること。
  • 感想文やエッセイではなく、指定された教材等の学習成果を明確に反映させること。
  • 本文文字数は、1,900字以上であること。

 

総評基準

  • テキストなどの丸写しは評価しません。
  • 記述内容が論理的であるか、結論を述べているかを評価します。
  • テキストをよく読んで内容を理解し、レポートの作成に取り組むこと。
  • テキストのみならず、参考文献を活用し、その学習成果を明確に反映させること。

 

★合格レポート★

 1.  レファレンスサービスの理論の歩み

1)  人的援助論

 19世紀最後の四半世紀に、公費に基づく公共図書館が米国において誕生し、地域社会の住民に不可欠の施設であることを認識させるための手段として人的援助が生まれた。

 1876年、グリーンによって人的援助論が発表され、レファレンス業務の基礎を築いた。同年、日本においても目賀田種太郎によって人的援助業務が紹介された。

 この頃、米国の大学図書館で初めてレファレンス業務が開始され、19世紀末、利用指導を中心とする人的援助が公共・大学図書館の一つの機能として確立された。

 

2)  保守理論

 1891年、チャイルドの理論以降「人的援助」という用語は「レファレンスワーク」に代わった。チャイルドの理論では、レファレンス業務が①利用者教育的機能を持っている、②利用者と資料の媒介的機能を持っている、ということを定義した。利用者に直接情報を提供するということは否定している。

 1900年、メルビル・デューイは、レファレンス業務は質問に応じてあらゆる援助を提供することであるが、求められる情報を図書から引き出すということは利用者に属する仕事であると、保守理論を説いた。

 1911年、ダナの理論はさらに保守性を高め、情報提供機能を否定し、教育的・指導的機能をレファレンス業務の中心とした。

 1915年に発表されたビショップの理論は、保守理論の集大成と言われ、①回答や情報そのものの提供を否定する、②教育的機能(指導的機能)を重視する、③媒体的機能を重視するため図書館的技術や知識の経験を重視する、と説いた。

 同年、日本の日比谷図書館にて「図書問合用箋」という問合せサービスが始まり、日本国内においてもレファレンス業務が展開されるようになった。

 

3)  自由理論

 1930年、ワイアーによって初めて自由理論が説かれた。ワイアーはこれまでの保守理論を否定し、情報の直接提供の道を開いた。

 サミュエル・ロースティンは、このワイアーの自由理論をさらに発展させ、体系化した。

 以上が理論の歩みである。

 

2.  教育機関におけるレファレンスサービスと利用指導の関連

 教育機関の図書館では、利用者の自立を促進する保守理論と、情報を迅速に提供する自由理論を質問の種類によって使い分けたレファレンスサービスを行っている。日常の業務の中で、質問処理という形で図書館の利用法や文献調査法の利用指導を行っているが、多くの利用者を一対一で相手にしていては非効率であるので、レファレンス係がリーダーになって集団指導を行っている。

 具体的には、図書館における利用教育においては、第1ステップ:図書館利用案内、第2ステップ:一般的基礎的な文献探索法指導、第3ステップ:主題文献探索法指導などに分けて利用指導が行われている。

 

3.  公共図書館におけるレファレンスサービスと利用指導の関連

 一方、公共図書館での利用指導は、利用支援という言葉で実施されている。印刷物やホームページ、動画に、図書館内や利用マニュアル、調べ方案内を掲載するなどして利用支援が行われているが、大学図書館のような利用教育はまだ展開されていない。

 また、教育機関の図書館と同様に公共図書館においても、保守理論と自由理論の両方が混在した形でレファレンスサービスが行われている。

 生涯学習にとって文献調査法を学ぶことは重要であるが、日本の学校教育ではほとんど教えられていない。米国では課題中心の授業であるため、小学校からレベルに合わせた図書館利用法や文献調査法をかなり徹底されて指導されているようである。

 生涯学習をもっと効率的に展開するためには、図書館のレファレンス係が中心となって一般社会人向けの図書館ツアーや文献調査法指導を実施してもよいであろう。図書館内にて展開する「文献調査法に関する利用教育」を市民にも開放し、積極的に展開していくことが求められる。

 

 4.  これからの利用指導の在り方

 従来のレファレンス業務は、本、雑誌、新聞等、紙媒体のものと視聴覚資料、地図資料等を基にサービスを行ってきた。しかし、高度情報化社会において、さらに磁気、電子資料など、新しい媒体による資料提供サービスが加わってきた。こうした新しいサービスはコンピュータを介して提供されることが多いため、図書館員は図書館学知識のみならず情報処理知識や主題知識が求められる。また、効率的、効果的に利用者に情報を提供するためには、コンピュータ活用に関連するインフラ整備など、複合的な環境整備が必要となる。したがって、従来の一対一の受け身的なレファレンス業務だけでなく、生涯学習との関係、集団教育としての利用指導、情報調査方法など、能動的な活動に関して積極的に展開していく試みが求めらる。

 

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