近畿大学図書館司書 通信課程 合格レポート

2020年度 近畿大学で図書館司書資格を取得した体験記

【図書館サービス特論】近畿大学図書館司書通信課程 合格レポート

設題

 身近にある公共図書館を実際に観察し、その図書館で行われている課題解決支援サービスの内容・特徴を述べると共に、設置されている地域の課題を考えると他にどのようなサービスが実現可能か具体的に提示しなさい。

 

レポート作成上の注意事項

  •  1,900字以上、書くこと。
  • 事例に採用した公共図書館の正式名称を冒頭に必ず書くこと。
  • インターネットで調べるだけでなく、実際に図書館に出向いてどのようなサービスが行われているのか観察して書くこと。

 

 

総評基準

  • テキストの理解がまず基本である。テキスト内容をしっかりと自分のものにした上で、実際に観察したこと、テキスト以外の資料で学んだこと、そして自分の考えをレポートにまとめて頂きたい。

 

★合格レポート★

〇〇〇〇〇図書館における課題解決支援サービスについて

 

1.  はじめに

〇〇〇〇〇図書館は、〇〇市の〇〇〇に立地し、市内で最も規模の大きい図書館である。体験学習館が併設されており、展示会やイベントなど図書館と連携した生涯学習の拠点として活用されている。同館における課題解決支援サービスについて、以下に述べる。

 

2.  現在取り組まれている課題解決支援サービスについて(参考文献1,  2)

2.1 学校教育支援

 〇〇市内の小学校では、朝10分間読書や、保護者やボランティアによる図書の読み聞かせ活動が積極的に行われており、こうした子供の読書活動を推進するため、同館では小中学校へ図書の団体貸出を行っている。調べ学習や学級文庫用に1クラス100冊まで団体貸出が可能となっている。

 また、市内小学校の学級を図書館へ迎え、施設見学を行うサービスを実施している。図書館員が図書館へのアクセス方法、貸出カードの作り方、貸出・返却方法を案内してくれる。

 市内中学生には、職場体験ができるサービスを実施している。図書館業務の実習や図書館員へインタビューができ、図書館の仕事について知ることができる。

 そのほか、市内の保育園、幼稚園、小中学校の先生向けに、学齢に応じた読み聞かせにおすすめの本をブックリストとして配布したり、図書館の利用方法や総合学習、施設見学等の案内を掲載した図書館ガイドを配布している。

 

2.2  子育て支援

 育児、子育てに関する図書情報を提供するとともに、様々な参加型の支援サービスを行っており、育児中の保護者の孤独を防いでいる。

 例えば、市内の乳児を対象に、3~4か月健診の際に絵本を1冊プレゼントするブックスタート事業を行っている。

 また、市内の各図書館において、乳幼児とその保護者を対象にしたおはなし会が毎週1回開催されている。同様に、幼児~小学生を対象にしたおはなし会も毎週1回開催されている。ストーリーテリングや、アニマシオン、室内でのこども映画会や野外映画会を不定期に行っており、多彩な行事がある。

 館内においてブックリストを配布している他、図書館ホームページ上において「すてきな絵本、たのしい絵本」というタイトルで、保護者向けに子供の成長にあったおすすめの本が紹介されている。また、単なる紹介だけでなく、絵本の選び方や絵本の読み聞かせの仕方、探している本が見つからないときの問い合わせ方など、利用者に配慮した形でサービスを提供している。

 

2.3  学習支援

 図書館に訪れるのが比較的少ない中高生世代向けに、児童書コーナーと一般書の中間地点にYAコーナーを設置している。CDやDVDなどの視聴覚資料の書架と隣接させ、漫画を置くなど中高生が気軽に足を運びやすいように工夫している。また、館内に学習机や会議室を設置し、学習環境の充実を図っている。

 

3.  今後の地域の課題解決支援サービスについて

 2020年3月に策定された「〇〇市教育振興基本計画 〇〇市教育プラン2020年度~2024年度」によると、市民アンケート調査結果(参考文献3  p18~p22)において、約7割の市民が1年間に何らかの学習活動を行った、と解答しており、学習活動への潜在的なニーズが伺える。一方で「仕事や家事が忙しくて時間がない」、「費用がかかる」、「(学級・講座の)時期や時間が自分に合わない」、「きっかけがつかめない」といった学習活動を行う上で何らかの支障を感じている市民が多くいることがわかった。学習活動を行っていく上で望まれる支援としては、「情報提供の方法を充実させる」、「施設への移動や交通の便をよくする」、「施設を平日や夜間にも開放する」といったサービスが求められている。そこで、今後はそれぞれが時間や場所に捉われず学習活動が行えるよう、非来館型のサービスが充実させていくことが望まれる。

 既に同館では、オンラインでリクエスト予約を行った図書を、貸出ロッカーを用いて時間外貸出できるサービスを行っている。また、ホームページのリンク集(参考文献1)にて、「青空文庫」や「国立国会図書館デジタルコレクション」、「米国デジタル公共図書館」などの電子書籍が利用できるし、「ジャパンサーチや」「出版書誌データベース」などのオンラインデータベースの利用が可能となっている。

 さらに今後は、有料の電子ジャーナルやデータベースを各個人のモバイル端末から利用できるようにしたり、オンラインイベントの開催や電子図書館を導入していくことが期待される。ただし、こうしたサービスを実現するためには、対応環境の整備の問題、専門的な人材を雇用する問題、コンテンツの拡充の問題、著作権の問題などがあり、多額の費用かかるサービスを公共図書館において無料で提供していくということに難しさがある。したがってまずは、オンライン講座や映画会、おはなし会など、費用がかからずにできる非来館型のサービスから実現していくことが望ましい。

 

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