近畿大学図書館司書 通信課程 合格レポート

2020年度 近畿大学で図書館司書資格を取得した体験記

【図書館情報資源特論】近畿大学図書館司書通信課程 合格レポート

設題

 

灰色文献とはなにか。灰色文献の定義や意義、特性について記述してください。また、灰色文献と言われる具体的な資料名を挙げて、その資料の特徴についても説明してください。

 

レポート作成上の留意事項

参考文献の著者名、署名、発行所、ページ等を本文の末尾に記述すること。

 

総評基準についてのメッセージ

  • 「レポート作成上の留意事項・ポイント」が守られているかどうかを判断する。
  • 問題についての基礎的知識があるか、論文の構成がきちんとなされているか、自己の言葉で書かれているかなどを判断する。

 

★合格レポート★

1.  灰色文献とはなにか

 世の中には、一般の流通経路には乗らない、発行が少部数で配布先が限定されていたり、所在確認や入手が非常に難しい資料があり、これらは「灰色文献」と呼ばれる。

 灰色文献には、専門性が高く貴重な情報源となるものが多くある。市販の誰でも入手可能な一般の資料を「白」、政治上・軍事上の機密情報が記載されておりごく少数の特定者以外には非公開となる機密文書を「黒」とし、その中間に位置するという意味合いから「灰色」と呼ばれる。

 

2.  灰色文献の定義

 灰色文献という言葉が最初に使われたのは、1970年に刊行されたドイツ語文献の"Graue  Literatur"であるとされる。1970年以前は、テクニカル・レポート、議事録、学位論文など、個々の資料形態名で呼ばれており、入手や流通の側面から、非市販資料や入手困難資料などと言われることもあったが、当時は定義化はされていなかった。

 灰色文献の定義が初めて国際的な場で定まったのは、1978年のヨークセミナーであった。灰色文献と非市販資料はほぼ同じ意味という点、下書き文書は含まない、という点について共通認識が得られた。

 その後、1995年の米国の省庁横断灰色文献ワーキンググループで、灰色文献は公開されたものが原則で、非公開資料や機密の情報は含まない、という点が明確にされた。

 1997年頃からインターネットの普及や情報の電子化が加速し始めたことにより、灰色文献やその定義にも大きな変化があり、定義の表現が「モノ」から「情報」に変わり、形態が「資料」から「情報」に変わった。

 その後も灰色文献の定義は変化し続けているが、出版商業ルートに乗らず入手が困難である、存在が判明しているのに全文情報にたどり着くのが困難である、という2点が基本となっている。

 

3.  灰色文献の具体例とその特徴

 

灰色文献には以下のものが含まれる。

政府刊行物

 国家機関が立法・行政又は広報のために作成・発行した資料のこと。

 図書館法第9条に、官公庁刊行物の公共図書館への頒布規定があるが、十分に活用されておらず、刊行情報が捉えにくい灰色文献であるといえる。

 2001年に情報公開法が施行されたことにより、各府省のホームページ上で情報提供が行われると共に、電子政府の総合窓口e-Govが整備され、国民がこれらの情報にアクセスしやすくなった。

 非市販の政府刊行物については、刊行情報の迅速な把握に努め、刊行の都度発行機関に直接送付依頼をしたり、普段から国の諸機関の刊行物頒布対象機関に加えてもらうなど、入手のためのアプローチが必要である。

 

地方自治体が作成した資料

 地方公共団体の諸機関が作成した地方行政に関する資料から、当該地域に特に関連の深い政府刊行物、住民からの嘆願書、要望書、ビラの類なども含む、地方行政に関する公私一切の資料のこと。

 こうした地方行政資料は、各地方公共団体のウェブサイトで公開されるものが増えているが、印刷資料としては非刊行資料も多いため、収集には絶えず役所内各部局と接触を図り、刊行情報を迅速に把握して寄贈・移管依頼を行うなど、図書館側からの働きかけが必要である。

 

③プロジェクトレポート、市場調査報告書など

 民間のシンクタンク、調査研究機関等が作成・発行したもの。

 

④学位論文

 博士の学位を取得するための論文で、学術的に信頼性が高いため、参考文献として用いられることがある。学位授与大学と国立国会図書館で保存されるが、本来流通を目的としていないため、資料的価値が高いにも関わらず入手が困難であった。

 平成25年より学位授与された博士論文は、原則として学位授与大学等がウェブサイトで公表することになり、国内の博士論文を検索することが可能となった。

 

⑤会議録

 学会等での発表論文、会議等の記録を正式にまとめたもので、一般に参加者のみに提供されるため入手が困難であった。灰色文献の典型として挙げられていたが、最近ではインターネット上で公開されるものも多く、入手しやすくなっている。

 

4.  おわりに

 現代社会では情報が極めて重要であり、日本では「情報公開法」を定めて政府の機関の保有する情報の公開を法的に義務付け、国民に政府情報を公開するよう定めている。

 図書館には、情報を収集し利用者に提供するという役割がある。現代はテレビやインターネットなどの普及により、情報量が著しく増大している情報過多社会であるといえる。このような状況下で、図書館における的確な図書資料を選択することは極めて困難である。灰色文献についても、その多くの部分がウェブサイトで公開されるようになったが、灰色文献の存在は消えていない。

 図書館は、利用者の知る権利を保障するため、灰色文献の収集、整理、保存、提供し、利用者と灰色文献を繋げる役割がある。こうした手立ての一つとして、メタデータの整備やデータベースの活用により、灰色文献の情報をいち早く捉えると共に、資料をどのように保存し、恒久的なアクセスを保障するのか、ということを考えていかなくてはならない。

 

2081字

 

参考文献

1. 伊藤 明著「図書館情報資源特論」近畿大学 2012年
2. 高山 正也, 平野 英俊編集 「図書館情報資源概論」 樹村房 2013年
http://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/58/58_193/_html/char/ja (取得日:2020年10月14日)