近畿大学図書館司書 通信課程 合格レポート

2020年度 近畿大学で図書館司書資格を取得した体験記

【図書館情報資源概論】近畿大学図書館司書通信課程 合格レポート

設題

(1)ネットワーク情報資源とはなにか、(2)公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴を述べるとともに、(3)今後の収集の在り方や課題についても述べなさい。

 

レポート作成上の注意事項

  •  1、2、3や(1)、(2)、(3)などの見出し番号と見出しを付けて記述すること。
  • 参考文献の著者名、署名、発行所、ページ等を本文の末尾に記述すること。

 

総評基準

  • 「レポート作成上の留意事項・ポイント」が守られているかどうかを判断する。
  • 問題についての基礎的知識があるか、論文の構成がきちんとなされているか、自己の言葉で書かれているかなどを判断する。

 

★合格レポート★

(1)ネットワーク情報資源とはなにか

 情報資源とは、必要なときに利用できるように何らかの方法で蓄積、管理された情報や資料をいい、図書館においては、図書、記録、視聴覚資料などが該当する。

 近年、ネットワークにおける情報通信技術の飛躍的な発展により、PCやスマートフォン、汎用タブレット端末などのデバイスが急速に普及し、ネットワークを通じて情報を受け取ることが一般的になってきた。それに伴い、情報を物理的媒体を介さずにネットワーク上で探索、入手、閲覧できるようになってきた。

 こうしたネットワーク上でやり取りが可能な、物理的媒体を伴わない情報資源を「ネットワーク情報資源」という。

 

(2)公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴

電子書籍

 PCや汎用タブレット端末、電子書籍リーダーなどのデバイスで、ネットワーク上のデジタルデータを読むことができるものを電子書籍という。

 東京都千代田区立図書館では、電子書籍を貸し出す「千代田Web図書館」を開始し、約4000タイトルを提供している。2020年現在で、97館が電子書籍サービスを導入している。

 

②音声コンテンツ

 ネットワークを介して音楽をデジタルデータで提供することを音楽配信サービスという。国立国会図書館では、「歴史的音源」というデジタル化した全音源約5万点を提供している。各音源は著作権の保護期間が終了したものを公開している。

 公共図書館では、ナクソスミュージックライブラリーからアクセス権を購入し、音楽配信サービスを提供しているところもある。

 

 ③放送・映像配信サービス

 国立国会図書館では、NPO法人科学映像館を支える会がデジタル化した映像のうち、1950~1990年代の映像を中心に国立国会図書館デジタルコレクションとして公開している。

 

④データベース

 図書館では様々な有料・無料のデータベースが提供されているが、公共図書館が提供しているデータベースの種類は少ない。

・雑誌記事のデータベース

例:ブリタニカ・オンライン・ジャパン,  ジャパンナレッジLib など

・新聞記事のデータベース

例:聞蔵IIビジュアル,  ヨミダス歴史館,  毎索 など

・過去のウェブページのデータベース

例:Wayback  Machine,  インターネット資料収集保存事業(WARP) など

 

デジタルアーカイブ

 デジタルアーカイブとは、原資料を所蔵している所蔵館や提供元が有形・無形の文化的資源をデジタル化し、ネットワーク上に保存した保管庫のことである。

 国立国会図書館は、自館が所蔵する資料を保存する目的でデジタル化したものを国立国会図書館デジタルコレクションとして公開している。

 

(3)今後の収集の在り方や課題

 図書館は、情報資源を収集、整理、保存し、利用者に提供することにより、国民の知る自由を保障する機関として社会的な役割を担っている。

 都道府県立図書館は、住民のあらゆる資料要求に応え、市町村立図書館の資料センターとしての役割を果たすため、すべての主題分野を包括し図書や雑誌、新聞等の伝統的資料以外にも視聴覚資料やネットワーク情報資源などを幅広く収集していく必要がある。

 一方、市区町村立図書館は、資料を収集する前提として住民のニーズと地域社会を反映したものや、利用者ニーズの高い資料を収集する必要がある。

 従来の図書館資料は、図書の他、テレビ放送、映画、音楽などはテープやディスクといった繰り返し視聴できるパッケージ型として収集されてきた。しかし、図書館施設のコンピュータ端末機でインターネットに接続できる環境が整い始めたこと、国立国会図書館で一部のウェブサイトを文化財として収集・保存する事業が開始されたことなどから、ネットワーク情報資源についても、提供・利用が進んできた。

 しかし、ほとんどの図書館では、動画配信や放送番組などは収集対象となっていない。過去の動画は、インターネットによる公衆送信を前提とした契約処理がなされておらず、様々な人物の映り込み肖像権問題などの解決が難しいためである。

 また、国内では青空文庫のようにボランティアの力によって作成・維持されているデジタルアーカイブの他、多くの都道府県立図書館ではデジタルアーカイブが公開されているが、未だデジタルアーカイブを導入しない図書館の理由としては、予算がない、人員がいない、ノウハウがない、著作権処理が困難であるという課題がある。

 さらに、デジタル化資料をインターネット上で提供することは、公衆送信権などの法律により容易ではない。

 Googleなど海外の大規模なデジタルアーカイブ事業では、各図書の著作権処理について、事前に許諾を得るのではなく、デジタル化後に権利関係者から削除の申し出があった場合に、受け付けるという、オプトアウト方式が取られているが、日本においてもそうした大胆な方式を取り入れていくことが必要である。

 

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参考文献

1.電子出版制作・流通協議会ホームページ https://aebs.or.jp (2020-10-1 参照)
2.東京都立図書館ホームページ https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/ (2020-10-4 参照)
3.図書館情報学会用語辞典編集委員会編著 「図書館情報学用語辞典 第4版」 2013年